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アドラー心理学と人間関係
心理学

アドラー心理学から学ぶ人間関係のヒント|「嫌われる勇気」の実践法

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「嫌われる勇気」で火がついたアドラーブーム

2013年に発売された「嫌われる勇気」は累計数百万部を超えるベストセラーとなり、アドラー心理学を一気にメジャーにしました。「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」というフレーズを聞いたことがある人も多いでしょう。

アルフレッド・アドラーはフロイトやユングと同時代の心理学者で、「個人心理学」の創始者です。フロイトが過去のトラウマを重視したのに対し、アドラーは「人は目的に向かって生きている」と考えました。過去に縛られるのではなく、今の自分の選択にフォーカスする。この姿勢が、現代の自己啓発やコーチングにも大きな影響を与えています。

この記事では、アドラー心理学の中でも特に人間関係に効くエッセンスをピックアップしてまとめます。

課題の分離 — 「それは誰の課題か?」と問う

アドラー心理学で最も実践的な概念が「課題の分離」です。

たとえば、あなたが一生懸命に仕事をしたとして、上司がそれを評価するかどうかは上司の課題。あなたの課題は「自分がベストを尽くすこと」であって、「上司に評価されること」ではない。

子育てでいえば、子どもが勉強するかどうかは子どもの課題。親の課題は「勉強できる環境を整えること」と「必要なときにサポートすること」。実際に机に向かうかどうかまでコントロールしようとすると、お互いにしんどくなります。

「これは自分の課題か? 相手の課題か?」——この問いを習慣にするだけで、引き受けなくていいストレスがごっそり減ります。冷淡になれという話ではない。境界線を意識したうえで、相手を尊重するということです。

承認欲求の否定 — 他人の期待を満たすために生きない

アドラーは承認欲求を否定しています。正確に言うと、「他者の期待を満たすことを人生の目的にしてはいけない」という主張です。

これはなかなか厳しい教えです。私たちは子どもの頃から「褒められたい」「認められたい」という欲求で行動の多くを動かしてきたから。親に褒められたくてテストを頑張り、上司に認められたくて残業する。

アドラーが問うのは、「それ、本当に自分がやりたいことなのか?」ということ。他人の評価を基準にし続けると、自分の人生なのに常に他人の顔色をうかがうことになる。それはかなりしんどい生き方です。

承認欲求を完全にゼロにするのは現実的ではないかもしれません。とはいえ、「今自分がこれをやっているのは、自分が望んでいるからか? 誰かの期待に応えるためか?」と時々自問してみるだけでも、行動の質が変わってくるんですよ。

共同体感覚 — 「居場所がある」という感覚

アドラー心理学のゴールのひとつが「共同体感覚」の獲得です。これは「自分はこのコミュニティに所属していて、貢献できている」という感覚のこと。

共同体感覚が持てている人は、他者を競争相手ではなく「仲間」として見られる。比較して勝ち負けを競うのではなく、それぞれの強みを活かして全体に貢献する。理想論に聞こえるかもしれないけれど、実際にこの感覚を持てているチームは強い。

共同体感覚を養うには、小さな貢献から始めるのが良いとされています。家族のために料理を作る、同僚の仕事を手伝う、地域のゴミ拾いに参加する。大きなことでなくていい。「自分が何かに役立っている」という実感が、居場所の感覚につながっていく。

勇気づけ — 褒めるのではなく横の関係で勇気づける

アドラー心理学では「褒める」ことに注意を促します。「よくできたね」「偉いね」という評価は、上から下への縦の関係を前提にしているから。

代わりにアドラーが推奨するのは「勇気づけ」です。「助かったよ、ありがとう」「一緒にやってくれて嬉しい」——評価ではなく、感謝やi-messageで伝える。相手を対等なパートナーとして扱うコミュニケーションです。

子どもに対しても同じ。テストで100点を取ったときに「すごいね」と褒めるのではなく、「頑張って勉強したんだね。その過程が素晴らしいと思うよ」と伝える。結果ではなくプロセスにフォーカスし、相手の存在そのものを認める。

横の関係というのは対等であることであって、敬意がないという意味ではありません。むしろ、対等だからこそ相手を一人の人間として敬える。この感覚が人間関係の質を根本的に変えるのだと思います。

今日からできるアドラー実践3つ

理論を知っても実践しなければ意味がありません。すぐに始められることを3つ紹介します。

ひとつ目、イライラしたときに「これは誰の課題か?」と3秒考える。渋滞でイライラ? 渋滞は自分にはコントロールできない。できるのは音楽をかけて時間を有効に使うことくらい。課題を仕分けるだけで、無駄なストレスが減ります。

ふたつ目、一日一回「ありがとう」を意識的に伝える。評価(すごいね)ではなく感謝(助かったよ)として。横の関係のコミュニケーションを習慣にする小さな第一歩です。

みっつ目、寝る前に「今日、自分は何に貢献できたか」を振り返る。大きなことじゃなくていい。誰かにドアを開けてあげた、でも十分。共同体感覚を育てる実践です。

アドラー心理学は「理解する」のは簡単でも「実践する」のは難しい。でも、毎日ひとつでも意識して続けた先に見える景色は、きっと少し違ったものになるはず。

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