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ユング心理学のタイプ論をイメージしたイラスト
心理学

ユング心理学で読み解く性格タイプ|MBTIの原点をやさしく解説

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MBTIの「元ネタ」を知っていますか

1921年、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングが一冊の本を出版した。タイトルは「心理学的タイプ」。この本が、100年後に世界中で流行するMBTIの原点になるとは、当時誰も予想しなかっただろう。

ユングはこの著作で、人間の心のはたらきを「態度」と「機能」の組み合わせで捉えようとしました。この理論を一般向けにアレンジしたのがMBTIであり、エニアグラムなど他の性格類型にも影響を与えています。

原典をそのまま読むのはかなり骨が折れる。でもエッセンスを理解しておくと、性格診断の見え方がぐっと変わります。

外向と内向 — エネルギーの向き先

ユングの理論で最も有名なのが「外向」と「内向」の区別。ただ、これは「社交的か人見知りか」という表面的な話ではありません。

ユングが言う外向とは、心のエネルギー(リビドー)が外界の対象に向かうこと。外向型の人は、人や物事との関わりの中でエネルギーを得る。新しい環境に飛び込むのが好きだったり、考えを口に出すことで思考が整理されるタイプです。

対して内向は、エネルギーが自分の内面に向かうこと。一人で考える時間を通じてエネルギーを充電し、外界の刺激が多すぎると消耗してしまう。

ここで押さえておきたいのは、これが「能力」の話ではなく「エネルギーの流れ」の話だということ。内向型でもプレゼンが上手な人はいるし、外向型でも一人の時間を必要とすることはある。あくまでどちらがベースかという傾向の問題です。

4つの心理機能 — 世界の捉え方と判断の仕方

ユングは人間の心理機能を4つに分類しました。情報を「受け取る」機能として「感覚」と「直観」、受け取った情報を「判断する」機能として「思考」と「感情」。

感覚機能が強い人は、五感を通じて得られる具体的な情報を重視する。「今、目の前にあるもの」に注意が向きやすく、現実的で詳細な観察力に優れたタイプです。

直観機能が強い人は、見えないつながりや可能性のほうに引き寄せられる。データそのものよりも「このデータが意味すること」に関心がある。パターンの認識や未来の予測が得意なタイプ。

思考機能は、論理的な分析に基づいて判断します。客観的な基準に照らして良し悪しを決めるので、一貫性のある決定ができる。ただし人の感情への配慮がおろそかになることも。

感情機能は、個人的な価値観や人間関係への影響を基準に判断する。「正しいかどうか」よりも「これは人としてどうか」「誰が傷つくか」が意思決定の軸です。

主機能と劣等機能 — 得意な機能と苦手な機能

ユングの理論のユニークな点は、4つの機能のうちひとつが「主機能」として最も発達し、その対極にある機能が「劣等機能」として最も未発達になるという考え方。

思考が主機能の人は、感情が劣等機能になりやすい。普段は冷静沈着だけど、感情を揺さぶられる場面では不器用になったり、急に子どものような反応が出ることがある。逆もまた然りで、感情が主機能の人は論理的な分析が苦手だったりする。

劣等機能は弱みであると同時に、成長のポテンシャルを秘めた領域でもあります。自分の劣等機能を意識して、少しずつ鍛えていくことで人格的な成熟に向かう——これがユングの基本的な考え方です。

MBTIの4文字(たとえばINFP)は、この「態度 x 機能」の組み合わせをコード化したもの。背景理論を知ると、アルファベットの羅列が急に意味を帯びてきます。

シャドウ — 自分の中の認めたくない部分

ユング心理学でもうひとつ外せないのが「シャドウ(影)」という概念。自分の中にあるのに認めたくない性質、意識から排除しているもの。嫉妬深い自分、怠惰な自分、攻撃的な自分——こうした暗い側面をユングはシャドウと呼びました。

シャドウは消えるわけではなく、無意識の中に抑圧されている。そして抑圧されたものは別の形で出てくる。他人のある行動にやたらとイライラするとき、それは自分のシャドウを相手に投影しているケースが少なくありません。

シャドウを「なくす」のではなく「認める」ことが大切だとユングは説いた。自分の暗い部分も含めて受け入れることで、はじめて心は統合されていく。性格診断が面白いのは、このシャドウに光を当ててくれることがあるからなのかもしれない。

ユング理論を日常で活かすには

ユングの理論は奥が深いですが、日常に取り入れるならまず自分の「主機能」を意識するところから始めてみてください。

自分は物事を判断するとき、論理で考えているのか、感情で感じているのか。情報を集めるとき、具体的な事実を見ているのか、全体のパターンを読もうとしているのか。日常の意思決定をちょっと振り返るだけで、自分の傾向は見えてくるもの。

苦手な機能を使う場面に出会ったら、「あ、これは劣等機能の出番だな」と自覚するだけで対処が変わる。苦手な場面でうまくいかないのは能力不足ではなく、使い慣れていない機能で対応しているだけ。100年前にユングが書いたことが、今の自分の日常をラクにしてくれるのかもしれない。

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